―駐車場へ向かって―
[当座の武器も何もない。手の中にあるのは猫、肩から掛けた鞄には筆記用具とスケッチブック。その他諸々の品。そんな装備で怪物の蠢く敷地内を走り回るのにはぞっとしない。
瞼をぎゅっとつぶってから。静かに歩き出す。
くた、となすがままの猫を刺激しないようにゆっくり。犬がいないか確かめながら駐車場へ。
途中携帯を開いてみた。時刻は表示する癖にどこにも繋がらないそれは、じゃらじゃら女子高生のようにたくさんのキーホルダーを揺らす。]
父さん
[まだ生きてますか。 その問いかけは胸の中だけで。
駐車場へ着いたときに、そこにまず人はいるのか見渡す。]
あんな放送しておいて、誰も残ってなかったとか――
そんなことあったらヒサンでワラえる
[言葉とは裏腹に、引き攣れた表情はしかし、常人よりも低い背丈を見つけた瞬間に明るいものへと変わった。その方向へ走り寄る。怪物は音に集まる、と学習したから大きな声は掛けられないけれど]
(240) 2011/12/04(Sun) 01時半頃