[ふと気がつくと、暖かい感触が側にあった。一番安心できる体温。だけど今はそれがきつく胸を締め付けた。
キルロイは、嫉妬に余り馴染みがない。これまでそういう感情は、全て見ない振りをして鍛錬の糧にしてきたけれど、今はそれをどう扱ったものか、持て余すばかりだ。
おやすみ、と声が降ってきて安堵する。そうだな、寝てしまおう。寝て忘れてしまえばいい。蓋をするのは得意だ。
――そう期待していたのに。]
……っ!
[紋はなくとも、敏感な箇所。そこに濡れた舌が触れて、思わず身がびくついた。尾に触れた感触は掴めないが、驚いた時に尾も跳ねて、触れたものを強めに押しただろうか。]
…………とう、さん?
[背後の気配に、振り向きそうになって。]
……何してんだよ。ヤナギさんいるだろ。
[我ながら、可愛げの欠片もない声を出して枕に頭を埋めてしまった。*]
(238) tomming 2016/06/21(Tue) 17時頃