[ 夕日に囲まれて、私は孤独でした。けれど、不意に人の気配を感じ、振り返りました。見覚えのある、高い背中。陸とは違う、男の人の背中でした。>>117
彼はもう、ここから立ち去る所だったようで、私が顔をあげた事には気づいていなかったかもしれません。いえ、それとも元より、私の事には気付いていなかったかもしれません。
できれば、そうであってほしい。こんな姿を見られた挙句、救いの手が差し伸べられなかったなんて気づいてしまったらきっと、いてもたってもいられなくなってしまいますから。
私は再びダンボールを抱え上げると、よし、と小さく自分を鼓舞します。考えてしまうことは沢山ありました。それでももがく様に頭を空にして、私は足を進めます。
止まってしまったら、きっと考えてしまいます。
陸に、私だけを見てほしいと。]
(238) 2015/10/30(Fri) 01時頃