― 給湯室 ―
[ ようやく談話室近くの給湯室に到着したのは、少女>>196の手が丸くなった身体>>186を撫でている頃だった。
シンクの中、水を流した痕跡のある銀色に包まれて横たわるアーサー>>218からは、先程までの警告音のような声は聞こえない。
給湯室入口上空からでも揺れる尻尾の先が見え、安堵にフェイスカバーが淡く曇った。]
あ 、
[ 曇った景色の向こう、金属音と水音、または電子音。周りと異なる響きが届く。
徐々に晴れる視界で傍らを見下ろすと、ふたつの姿を捉えることができた。]
もな りざ、 と ――。
[ 衝突未遂で出会ったあの時、名を目にしていたなら「すぷすぷい」と、そうでなければ「しろいはこさん」と存在に名をつける。
近づけば近づく程上辺ばかり見える視界は、その内側でざぶりと音を立てる水の状況を把握できない。]
あ、 ど、 うぞ。
ぼくは、 もう、 だい じょぶ。
[ 点滅する表示を捉えると入口の縁を掌で弾いて、身体を向かいの廊下の壁へと押し運んだ。]
(236) 2020/08/27(Thu) 21時半頃