……っ、シメオン!
[少しだけ掠れた声で名を呼んで。「約束どおり」見つけに来たのを知れば、安堵と同時に押し寄せる、昨夜のことを思い出す。
整った造形はたちまち崩れた。くしゃりと顔を歪ませて、再び涙が込み上げて。]
ふ ぇ……っ、怖かったよ、ぉ……
[拭われる側から止めどなく雫が頬を濡らした。堰が切れたようにしゃくり上げ、縋り付きシャツの袖をぎゅうっと掴んで。
肩口に顔を埋めて泣きじゃくった。ひどく恐ろしかった、まだ鮮明な記憶を紛らわすように、子どもの腕で強く抱きしめる。
頬に触れる温度を感じながら、涙も止められぬままこくりと首肯する。懇願を受けては頷くほかにない。どれほど恐怖を味わったとしても、たとえそれが故意であったとしても。
ちゃんと、主人が迎えに来たという事実だけで、少年が許すには十分だった。*]
(236) 2017/10/09(Mon) 07時半頃