[それからも、彼が尋ねて来ると、小さい時は腕に飛び込んで。少女になってからは、小走りに駆け寄って。成人してからは……やっぱり駆け寄って。
何時も満開の笑顔で、彼を出迎えた。
『かくれんぼう』には、喜んでお供した。
絵を見る時は、彼の少し後ろに椅子を持ってきて、プラプラと座って足を揺らしながら見るのが好きだった。
綺麗な花の絵も。珍しいお土産も。かくれんぼうも。
本当は全部、叶わないって、どこかで知ってた。
女は馬鹿だけど、愚かでは無かったから。
彼の思い>>209は、知らなかったけれど。知って居たから。嫌じゃなかった。
だって彼は、私に会いに来てるんじゃないんだもの。
絵に会いに来てるんだもの。
絵が欲しいって言う彼が、来てくれるのは、嬉しかったから。
お姉様が、絵を売らなければ良いって思ってた。
そうして彼も、そう思ってるんじゃないかって。
心の何処かで、思ってた。]
(232) 2016/07/28(Thu) 01時頃