―抹消したい記憶の話―
[夏は開放的な季節だ。
インドア派の螢一にとってもそれは全く変わりなく、そしてそれが不幸の始まりだったといえるのかもしれない。
メールの着信音が響く度に心臓も大きく鳴った。
夏だし、高校生だし、なんて心の中で言い訳をしながら登録をしたのは、所謂ゲイ向けの出会い系サイトだった。
十代でも登録可能なサイトを選ぶ辺りが螢一の無難且つ臆病な所ではあったのだけれど、そこはまあそれとして。
やがて届いた一通のメール――幾度かの遣り取りを経て
『会いませんか』
流れとしては当然だっただろう。
どうやら行動圏内も被っているようだし気が合うのかもしれない、そう考えて待ち合わせ場所に向かった螢一が眼にしたのは、メールで知らせてきた服装そのままの、夏休み前までは同じ教室で机を並べていた同級生――芙蓉 凱翔の姿だった]
(231) 2015/03/30(Mon) 08時半頃