──通学路──
[雪の降る通学路を、黙々と歩く。
ひとりで歩くのは得意だ。
斜め下の地面を見据えて歩きながら、様々な空想を巡らせていれば、あっという間に目的地にたどり着く。
例えば、今日は雪道。いつもの地面が真っ白い。
そうだ、こんな日には、灰色にけぶる道の先にカリュクスが佇んでいたっておかしくない。
電車でも捲っていた本を思い出す。>>63
雪花の使者、カリュクス。
雪の色をした、奇跡の少女をめぐる魔法の物語。
主人公の男の子の、ありふれた日常をあっという間に非日常に塗り替えてしまったカリュクスの、クールだけど愛らしい容姿は本当に魅力的だ。
この雪は、もしかしたらカリュクスが降らせているのかもしれない。
少し調整を失敗して、降らせすぎてしまった大雪だ。
そう思えば、じわりと靴の中に染みてゆく冷たい水も、寒さで痛いぐらいの膝も気にならない。
この雪は、きっと優しい非日常。カリュクスの魔法。
そんなことを考えていれば、ほらね、学校まではあともう少し。**]
(228) 2015/07/05(Sun) 01時半頃