[ワゴンを走らせながら、道行く人々を見渡して行く。
遅くまで遊び呆けている生徒はいないか。道を踏み誤っている若者はいないか。
もっとも、学生時代のささやかな校則違反などに逐一目くじらを立てるつもりはない。
けれど――――男は、この見回りの時間が好きだ]
平和ですね。今日も。
[行き過ぎてゆく風景は、街のいたる所で目を奪う。
幼稚園や保育園などの幼児施設から、介護保険施設などの高齢者向け施設。
ゆりかごから墓場まで、とは別の国の標語ではあるが、社会的弱者もしっかりと街ぐるみでささえ、この平穏を維持していこうとする故郷のことを、男は誇りに思っている]
若い頃は、警官に憧れたものでしたね。
この身体を活かして、この街を守りたいと。
[障害により、断たれた夢。それはもう叶わない希望。
その思いは一部……と言えぬこともない程度には、男の趣味に活かされてはいるけれど。
結果として、こうして男が携わっている仕事。次世代の芽を育むという使命として、街への献身の思いは引き継がれている。
胸に宿る挫折と再生の記憶を心の中で反芻しながら、暗がりに沈む街中を、ひた走る]
(224) 2011/11/27(Sun) 23時頃