―回想:文化祭後―
『咲野さん、良ければ俺と付き合ってくれないかな』
[ そう言って目の前で優しそうに微笑む男子は、隣のクラスのバスケ部の子でした。陸とは少し違うタイプのハンサムな笑顔と、利発そうな瞳がとても彼を輝かせて見せて、あぁきっとこの人は人気なんだろうなと一目で伺えます。私とまったく面識のなかったその人は、私を好きだと、そう言いました。一目惚れだと、笑顔が好きだと。
その頃にはもう、陸から愛を向けていただく事を諦めていた私は、突然湧いて出た愛にとても戸惑いました。けれど、両親にも想い人にも愛していただけなかった私は、その方からの愛を純粋にうれしく思ったのです。きっと私に彼氏ができたと言っても、陸はなんとも思わないでしょう。けれど、私はもしかしたら、望んでいた恋ができるかもしれないと。]
(223) 2015/11/02(Mon) 01時半頃