[松明を片手に、記憶通りに道を行く。
中は迷路のように続いているため、何も知らぬものでは、迷う事請け合いな洞窟である。]
罠もあるから、俺の後ついて来ないと迷ったら出れないかもね。
[そんな風に笑いながら、道を進んで行く。]
弟子は取らないんじゃなくて、やりたがる奴がいないだけさ。
騎士やら、貴族やらそういうのになりたがるのは多いだろうけどさ、わざわざ地味で、表舞台に立つ事のない職人を好む奴なんて多くはないよ。
[なにより、その名を継ぐのは誰でもいいわけじゃない。
才覚と、強い意思、師を超越するという気概がなければ、弟子を取れない。]
何より、俺の命も長くはないだろうしね。
師を、超えるたびに華月斎という名を継ぐ者は短命になっていく。
人の身でありながら、人の手を超越する物を創る、まるで呪いのようなものさ。
[先代に至っては、僅か30を前にその命を落とした。
いつの代から繋がる呪縛なのかは知らないが。]
(222) 2012/08/09(Thu) 17時頃