[ 左手から力が抜けていく。手を離したとき、ヘクターの右手が襟へと伸びるのを見た。
まさか。
ぶわりと鳥肌が立つ。]
ち、くしょ……休ませるなんて笑えねぇ冗談…………どけ、よ……!
[ 外気に晒され、ぶるりと震えた。
乙女のような恥じらいなど持ち合わせていない。しかし、日光が苦手で夜勤で働かせてもらい、年がら年中首から上と手以外露出しない服装をしているだけに、暴かれるとたまらなく不快だ。
何をしようとしているのかわからないほど初でもない。何度か後ろの方も貞次に求められて経験はあったが、経験があるだけに恐ろしい。
圧倒的体格差、獣の声に生物としての恐怖も呼び覚まされる。血の気が引いていくのを感じた。
どん、と電気を纏わせた拳で鳩尾を殴り付ける。
重量のある薙刀を軽々と振り回せるほど鍛えた亀吉の拳は、半魔の彼にはどれほど効いただろうか。
拳にせよ電気ショックにせよ、一般的な大男をギリギリ気絶させる程度に加減してある。「ヘクター」を傷つけるようなことは絶対に避けたかったからだ。半魔の体が術に耐性があるとも知らず。]
(222) 2016/06/10(Fri) 23時頃