[トレイルが召喚し、己の血を分けた黒蜂は自らに同調してしまったのか、こうして時折姿を見せた。
元が呪いより生まれた蟲は、人の負を好んで這い出る。
特に男が今現在抱える不調は、希少性から珍味とも言えて。
徐に差し出した指先に悠々と止まる。
そのまま寝台に腰を落ち着け、咎めずに置いてやれば、細く透き通る羽をピンと伸ばし、己の身体から体力と病魔を奪っていく。
レンズ越しの瞳を細めて眺め、指ほどのサイズであった黒蜂は陰気を得るほどに身体を黒く染めて膨らんだ。
硬質なフォルムは燻したように輝き、触角を揺らす。
蜂の複眼が煌くと、瞬く間に掌に納まり切らぬ大きさへ。]
あいつの才も見事なものだが、少し大きくなりすぎたな。
[陰気が抜かれたお蔭で、多少の回復を見込むが、昆虫と呼ぶには随分巨大化してしまった気がする。
掌を返し、八本の細い足で器用にバランスを取る黒い蜂の単眼に如何するべきかと瞳をあわせた。*]
(220) momoten 2014/02/10(Mon) 22時半頃