[そういえば賄賂も渡していないのに繭身の母はごきげんである。
どうやらエリアスのことをいたく気に入ったらしい。
「連れてくるのが野生の熊だったらどうしようかと思ってたの!」
母上、さすがに僕とてそんなことしない。熊は友人でなく倒すべき好敵手だ。
それにくまっしーとやらが好きなくせに野生の熊がだめとはなんてわがままなんだろう。
やはり母上は苦手だ。
汗を流し朝食をおなかにおさめれば、多少くらくらするが大丈夫この二本の足で僕は歩ける。
左手首の湿布と包帯を巻き直すと、桐たんすから白地に薄紫の縞模様が入った紬の着物を取り出し身につける。
溜め息をつきながら。
そうして外出しようと電話をしている母の隣をすりぬけようとすると、これまたとんでもねー内容が聞こえてきて>>121]
…………………………。
[一度部屋に引き返すと、濃紫の袴を履き直して長い布ケースを片手に、自宅を出た。]
(220) 2013/12/10(Tue) 22時半頃