―朝―
[ふと目が覚める。雨が降り続いていて、外は薄暗く時間が分からないが、時計を見るとまだ6時前。
教室の黒板に「図書室に行ってきます。伏瀬」と書いてから今日の本を選ぼうと図書室へ向かう。
図書室で棚を物色していると目を引いたのは『銀河鉄道の夜』。
取り出してめくる。
思い出す、文化祭のときのこと。
文芸部だからと書いたこともないのに脚本を任され、悪戦苦闘したこと。
出来上がったものを演劇部の顧問に見せて、アドバイスをもらったこと。
本をそのまま書くのではなく、人を生かさなければいけないこと。出来上がったものはもちろん書き馴れている人の脚本にはかなわないものだったけれど。
変わらぬ世界を外から愛でるのではなくて、自分の手で作り出す喜び。
もちろん、脚本は原作の世界を借りたもの。
すべてが自分のものではない。
それでも、新しいことに挑戦することを初めて楽しいと思った。]
(213) 2014/04/29(Tue) 23時半頃