――食堂へ――
……良い、匂い。お腹空いた。
[こんなに悲しいのに。世界が終わってしまいそうなのに。自分のお腹は、クゥと鳴る。
泣き腫らした目をしたまま、絵画の前の椅子もそのままに、匂いに釣られるように食堂へと向かう。
メイドにメニューを聞けば、むぅと口を尖らせた。]
また、キルロイね。
どうしてチョコレートのムースなの?
なんでローストビーフなの?
何枚も切り分けて貰いたくなるじゃない!
ジャガイモのスープだって好物なのに。
ガーリックシュリンプとか、お客様だって居るのに何であんなに美味しいの?
もう今から未来が見えるわ。私には見えるわ。
ローストビーフをきっと4,5枚食べるのね。これで最後。後1枚だけって、きっと4,5回言うのよ。
そうして、もう食べられない。お腹一杯。これ以上無理って所に、チョコレートムースが誘惑してくるんだわ。私知ってる。この道の大家だもの。
(213) 2016/07/28(Thu) 00時頃