[様々な色の絵の具を手のひらにつけて描かれた花の絵は、あの日、窓から花が見える場所のように色鮮やかなものをえらんだ。
ドロシーを色で表すなら何色か、なんてくくりつけるのもの勿体無かったし、何しろ少し変わったくらいのものが彼女に似合う気がした。
“ドロシー、今日も面白くておかしくて、珍しいものを見つけたから『かくへんぼう』に付き合ってくれないか?”
唯一といっていいほど、快く迎えてくれたドロシー>>173には、もはや決まり文句となった合言葉を囁いて土産片手に現れた。
その頃にはすっかり彼女はすっかり格好も変わってしまったけれど、いつか飛びついてきてくれた妹のまま、ジェフの中にはあったのだ。
いつまでだって可愛い子だった。
けどもいつも不思議だった。
ドロシーにとってもあの絵画は特別なものかもしれないのに。
それが欲しいとねだる自分の存在は彼女にとっで邪険なものではないか、と。
尋ねることはなかったけれど。
訪れるごとに絵画を眺めていた。
あの日、彼女に見つめられたことを知らないまま、1人になるといつでも、絵画を通して、なにかを。
また、扉を抜けて、潜って、訃報が耳に届くまで]*
(209) 2016/07/28(Thu) 00時頃