[きっと男が冷静であったなら。
このあと彼女が起きる可能性も考えて、喉を暴き声帯ごと取り出してしまったに違いない。……だがしかし、今男は非常に高揚していた。
先ほど彼女の喉を塞いだ舌先は、先ほど取り出した際に放り、男が立ち上がった際に踏み潰してしまったかもしれない。…男はグチュリとしたその音さえも忘れていたのだから、気づくこともなく。
男はシャツの前を閉めることも、自身の腹部に沈んだままのナイフを抜き取ることも忘れてしまっていた。]
(……あの扉の向こうになら安置できるような場所があるだろうか?出来る限り誰にも触れることができぬよう、綺麗にしておかなくては……。)
[臓物を取り出すにしても、縫合するものを何も持ち合わせていない。普段は家に招く側のため、持ち歩くこともなかった。
血の気が失せ、色の無くしたサクラコ>>203を腕に抱えたまま……その扉が開かないか、ガチャリガチャリとノブを回してみただろう。
そうこうしているうちに、彼女が生き返って仕舞えば、きっと落胆してしまうのだ。────もしかすると、抱えていた人形を思わず落としてしまうほどに。]**
(207) 2016/02/28(Sun) 03時半頃