[しかし、己の耳に潜り込んでくる不意の呼び声は年月を経てなお、褪せぬ別根の声。
もの言いたげに一瞬瞳を揺らすが、呼び名に関しては双眸を半眼に変えるのみで留め]
似たようなものだろう、怖いなら下がっていろ。
[強がる様を見せる別根を一瞥し、意識は水と土の攻防に移る。
どちらも新入生ではないだろう、と魔力の錬度から当たりを付け]
[ゆっくりと右の五指を握りこんでから、腕を持ち上げ冷気を溜める。
狙う先は丁度、針山と露蝶の対峙する真ん中。
枯れ枝よりも細い氷の一矢を作り出し、指を一本立てて、進路を定めれば、そのまま真っ直ぐ解放して飛ばす。
攻撃ではなく、二人の注意を引くような信号弾めいた一投。1
上手く行けば、二人の合間を通過し、失敗すれば雨のように細い水がバラバラと音を立てて前方に散らかる。
どちらにせよ、注意を引くという目的を叶えるための代物]
(206) 2013/08/22(Thu) 22時半頃