[ わかっている。
わかっているからもどかしい。
自分がそれを言ってしまったら押し殺した気持ちの行き場がなくなってしまう。
せっかく築いている安寧が、崩れそうに。
注意すればすぐに分かる。
律の言葉には不機嫌だけではなくて擦り切れそうな何かがあること。
だって、ずっと一緒にいたのだから。
憧憬がいつしか好意へと変わり成長と共に好意の意味も変貌してしまって。
早く離れて忘れてしまおうと、次の学校は此奴がいない所へと決断したのは早かった。
唯一無二の人であるからこそ、それを失った時の感触が残ることが怖くて選んだのは逃避。
なのに容易く海を越えてきたバカのせいで、すぐにでも伝えてしまいたいものを沢山殺した。
できるだけ律を見ないように。
幼い頃のままの二人でありますように。
と、今日まで続いている関係は何処か歪で不自然で。
カメラ越しにでしか律を見ることが出来ないこの眼には、わかるはずはないけれど。]
(206) 2015/11/21(Sat) 01時半頃