[ 貞次がこの趣味の悪い男に直接弄ばれたわけではなかった。飽きて捨てられたわけでもなかった。それは意外だった。意外といえば、自分の顔と貞次のことを記憶していたこと自体がそうではあったが。
貞次が情報を漏らすことなく、亀吉の名を呼びながら心を閉ざしたことは亀吉の知らないことだった。
しかし、どれほどの期間かはわからないが、なぶられて捨てられたことは変わらない。
大事にしてほしいか、という問いは亀吉の耳には揶揄のように響いた。]
お前の「大事にする」って……なんだ?
精神を破壊するまで堕落させて壊すことか?
だいたい、殺す相手に仲間のことを頼むわけないだろ。
[ 飽きて捨てたわけでないなら、直円は亀吉が持っていたイメージ像とは少し異なる。しかし、壊れたラルフや他の仲間の状態を是とするなら、直円の「大事にする」は人間のそれとは違う。
貞次の状態がその結果なら、「大事にしてくれ」などと頼むわけがない。]
(205) ひひる 2016/06/21(Tue) 01時頃