〜庭、露蝶と〜
[屋敷内にいた人間の中でも、彼女はかなり好感を持っていた人物だった。
屋敷で開かれていたパーティの余興だとか、偉いさんの接待だとかで自分はよくピアノを弾かされた。貴族のたてる雑音に耳と脳はかなり悲鳴を上げていた。
しかも、自分の顔のせいもあり、その後、貴族の女から今晩御付き合い頂けますかとかそういう迷惑な誘いまで来る始末で。
愛しいマダムは、そこらへんは他との会話で忙しく、こちらの相手はできなかった。
ピアノは好きだが、そういうのはこりごりで、いつも庭へ逃げていた。
頭を抱え、しゃがみこんだ時、馴染みの少女はよく彼を楽しませてくれたから。>>184
ここは自分を包み込んでくれる、まるで自分が与えられていない、マダムの真の愛のような、そんな感じがして。]
覚えていてくれましたか。……ここはいつも変わりませんね。まるでいない彼女が、ここにいるかのようで。
[少し目を地に伏せ、自分には与えてくれなかった、その感触を耳で味わう。
自分は危険視されていたのかもしれない、などとそのようなことは考えず。
今はいない彼女へ、暫し想いを馳せて。
ジェフリーに向き直るのは、さらに言葉を交わしたあとか。]
(201) 2016/07/28(Thu) 00時頃