[セシルに打明けた秘密は、どこまでになったか。
化粧直しも碌にせぬまま、女はどうしてもと意志を貫いて、懲りもせず再度バーナバスの遺体と対面した]
せめて、一目だけでも。
そのお顔を拝見しとうございます。
[神経の細い女の見るものではないと強く諌められたが、頑として譲らず。
仮面は外されていたろうか。蜜蝋が接着し、皮膚の捲れ爛れた無残な有様から、元の素顔など想像しようもない。剥き出しの肉の生々しさ、見え隠れする鼻骨の白。眼窩からぎょろりと覗く目玉、あれが仮面の奥の眼差しと同一だったとは信じ難く。己の醜い火傷痕も耐えられたのだからと、何度も意識を手放しそうになりながらも、目に焼き付ける。
焦げたダークブラウンの髪を撫でると、脆く崩れ抜け落ちた。辛うじて無事な耳裏から頤の輪郭を首までゆっくり辿る。
――果たせなかった約束に、縋るような想いで*]
(200) 2011/02/09(Wed) 02時半頃