[ 背中をぶつけ、肩に激痛が走り、現実に呼び戻された。
ヘクターの獣の姿を目にするのは初めてだった。
その姿は常々見たいと思っていた。彼のことをもっと知りたかったから。もっと心の深い領域に立ち入りたかったから。
それが、まさかこんな形で見ることになるとは。
見慣れた姿より一回り大きい体。想像していたよりもずっと強い力。野生の獣の目。まさしく飢えた狼そのもの。入っているものは、おそらくヘクターとは別物。
気を抜けば気圧される。
汗が滲み出した。痛みに喘ぎながら、怒声をあげる。怯む様子は見せまいと睨み付けた。]
ふざけ、るな……。お前は、……っ゛、ヘクターじゃない! ヘクターを汚すなっ!!
……!
[ そのとき、四井から無線が入った>>170。
彼の敏感な耳が音を拾っていないことを祈りながら、視線はヘクターからそらさないまま、肩をおさえつけられていない方の手を無線へと手を伸ばす。両方おさえられていたのなら、隙を見計らうつもりだ。]
(196) 2016/06/10(Fri) 21時頃