[ 彼女の死体は一度撫でた後はもう視界に入れないようにしていた。だから彼女の手許にナイフを落とした事にも気付かないし起き上がる瞬間も見逃すこととなる。
動かないのでは、詰まらなくて、虚しい。
やがてその虚しさは憤りへと相成る。
自身の名を呼び、自身を認めてくれる存在(無理矢理言わせた部分は考慮外)を傷つけ、命を奪ったあの男に矛先は向き。
首にペン先を突き立てられる、それさえなければあの時男は玩具の首を締め発言の訂正をさせる程度に留まった筈だ。……きっと。
そしてここから脱出するその時まで、みすぼらしい少女は自身が特別であることを実感させてくれる路傍の花であり続けた筈だ。それを奪いやがって。
──等と至極自分本位の理由で憤っていた。何故彼がそうしたのかなどは気にならない。]
殺してやる殺してやる殺してやる……ッ?
[ 服を整え切れば今にも階段を駆け上がり飛び出そうとしていた。けれど自身の名を呼ぶ声(>>185)が耳に届けばビクリと肩を揺らし、目を瞬かせる。腕の中で幾度か聞いた声。否、それよりは通りがずいぶん良く聞こえたか。]
(196) 2016/02/27(Sat) 23時頃