【人】 宝飾交易 黍炉

[だが、そうならば、そうと知らぬ筈もないであろう、差し出して来るのは、トレイルの息の掛かったドールの様に見える。

唯一才能も有った解除の呪文を紡いで、親指に牙を立て、溢れた赤色をドールの額に塗り付けて文字を描き、恐らくトレイルから、そのドールに掛けられた従属の鎖を破壊した。解除だけなら流派なんて然程関係ない、これは破壊、つまりは力技なのだから]

　……――、――

[耳鳴りのような音を残して、砕け落ち、消えゆく呪力の欠片を見送ってから、
溜息交じりに、観念したように、本を受け取る。人をも軽く殴り殺せそうな凶器の様な魔導書は、腕にずっしり重く…酷く懐かしさを覚えた]

(195) yahiro 2014/02/10(Mon) 09時半頃