―待機室―
ここにくる前はね。 …こんなに、忘れっぽくなかったんだ。
[ぽつぽつと、唇から零れる言葉は肯定を紡ぐ。
指の間から零れるのは、元の色素が半ば抜け褪せた様な、酷く細い髪。
少しだけくすぐったいのか気になるのか。あおが、幾度か瞬きを繰り返す。]
――…そっか、わかる かな。
でもたぶん、…“あっち”に戻る前には、わかんない よね。
…この役目が終わったら、
[わかると、いいな。 と。
再び、繋がれる事に躊躇が無いとばかり。やはりそれを口にする。
其れが当然と言う様に。疑問も、嫌悪も。全ての思考を放棄した結果。
それでも、感情の其れが残っている事に 少しだけ嬉しげに。
うすく うすく。口許が弧を描く。
ふと、髪から離れた温もりに、あおがぱちりと瞬いた。
ゆると、視線が上がる。宙に留まった手を どうしたのかと。]
(195) 2011/04/20(Wed) 02時頃