[ほとんど息のような微かな声で、何かを言いかけて。
しー、という内緒のジェスチャーに言葉を呑み込んだ。掌に転がされた砂糖菓子に目を落とす。少女の瞳のようにきらきらと輝く、宝石のような甘いキャンディ。
それを零さないようにポーチに仕舞い、ミタシュの前に片膝をついた。]
わたしは思い違いをしていた。
君は守られるべき、か弱い存在だと思っていた。
ありがとう、勇敢なレディ。
このトルドヴィン、今夜は君に命を預けよう。
[跪く、という行為はトルドヴィンの故郷で最上位の謝意を示すものだ。異星人とあまり関わりを持たない彼らの星では、女王に対して行われることがほとんどであるが。
男の知る限り最大限の感謝と敬意を示したつもりのそれは、傍目には傅く騎士のように見えたかもしれない。
守る、という宣言からするとそれは全く反対の絵面なのだが。]
(191) 2020/08/29(Sat) 18時半頃