─コテージ内─
[道中交わされた会話はあったか、なかったか。
わざわざ自分から塞いだ逃げ道を、自分が遁走する訳にもいかない。
それでも今になって、自嘲めいた感情のひとつふたつ、浮かび上がるようで。
そう口数は増えることもなく、襟まで閉じたコートに鼻から下を埋めては、先を急ごうとしたはず。
順当に辿り着いたなら、彼の後に続いて部屋に入ることになるか。
ベッドには見向きもせず、部屋の隅に旅行鞄をどさりと放って。]
……腹、減ってきたんで。
[言葉を探して数瞬。
さも当然めいた、だけれどあまりに素っ気なくて在り来たりな理由を付けては、強く止められない限りすぐにまた扉をくぐろうと。
部屋の外に出たとしても、まずは厨房に向かうより買い出しに向かうより。
今になって早まる鼓動を押さえつけるために、扉に凭れてポケットから煙草を取り出して。
さて喫煙所はと、まずは深く息を、ひとつ。]
(190) 2015/11/13(Fri) 01時頃