[高級繁華街ならいざ知らず、スラムとも形容される裏通りに点在する娼館の客層は知れていて。
貧しく寂しい暮らしに飽いて、せめて夢を買おうとする近隣の男か、彼方此方に傷持つヤクザ者か、黒服のマフィアか。あぶく銭を得た浮浪者か。
観光の心算なのか富裕層がお供引き連れて現れたり、
わざわざ服装を乱してまでお忍びで現れたりすることも無いではないけれども、
金をぽんと投げて寄越したり、どこかで噂聞きつけた『限定商品』の花を買いに来たりするような世間知らずというか物好きな客はさほど多くはなく、
また、お金の匂いというものは滲み出るもので、スラムの人間の目を誤魔化すことは出来ず、いわゆるカモネギ状態で多かれ少なかれ危険な目に遭うのがオチです。
一見してこの青年は、どれにも属さないような気がしました。
夜の女の勘、というものでしょうか。]
(189) 2014/01/21(Tue) 22時頃