[その取引(>>156)がいかに僥倖であったろうか。
彼はまだこの館に住まわせる旨を言っておらず、メルヤからここに置かれるための取引を持ちかけて来た。
しかも対価が料理をするという生命に関係ない安い提示――言い換えれば、そこに苦渋の選択は感じられなく。
つまり、このメルヤと言う少女には『帰りたい』という願望がほぼ存在しないのだ。]
よし、ではそういうことにしようか
――でも、それは治ってからだからね?
[微笑んで取引を了承した。
身の回りの世話に必要なのはもちろん、彼の研究は完成したとしても実行のためにはどうしても助手が必要なのである。
そのためには人間から隔絶された、しかもできるだけ無欲な人物でなければならない――それが偶然にも見つかったのだ。
とはいえ、あっさりと信じて受け入れたのは人間に敵視される魔法使いとしては軽率で、その意味ではメルヤが感じたとおりに苦労知らずなのだろう]
(188) 2018/06/11(Mon) 21時半頃