[また一滴水が落ちてきた。本当に雨が来るかもと思う。
本降りの前に屋根のあるほうへ移動しなければ……
考え事とは別に「ウォシュレット」と呟いた。魅力的だが、心の余裕に欠ける窮屈な表の世界では、このままじっと雨を待っていると誰かに怒られるに決まっている。
「見てない」誰かの足や、「見てないことにした」誰かの目などを感じながら、優しい女子高生が差し出してくれたノートを一枚千切って、ノートを返そうとするも、既にそこに姿はなかった。
紙をよく揉み、尻をふく。立ち上がりざまハーフパンツを腰骨に引っ掛けて、使い終えた紙を、近くにあったゴミ箱にいれる。
出たものは……手で掴んで片付けてもいいが、雨に流して貰うのもまた自然だろう。]
おれのはいいぞ、食うと強烈にハッピーになれる。
大きくなれよ。
[屈んでいる時から既に寄ってきていた虫に対して慈愛の視線を投げかけながら囁いた。]
腹が治ったからもう大丈夫。
[と声をかけたが、女子高生はあまり大丈夫じゃなさそうだった。]
ノートありがとう。返すね。さあ……次で目的地。
さっき知ってる顔も見たからねー。
(188) 2015/06/02(Tue) 13時半頃