― 週末、夜へと向かう ―
[昼間は陸でしか出来ない些末事を済ませた。
朝と、昼と。
陽光に微笑む水平線を眺め、ことりと鳴く胸を笑う。
中天に太陽が昇ると同時に、懐中時計のねじを巻いた。
古風な顔を持つそれは、案外古くもない。
いかな現代とは言っても、人の感覚とは不確かなもので。
長い船上生活。なにかひとつ、一日のしるしを作った方が良いと勧められ……と、ここで語るべきは始まりじゃない。
いくら毎日巻いても、陸に戻れば幾ばくかはずれていた時計が、今朝はぴたりとテレビの時報と合っていた。
前回帰った時に、誰かのーーセイルズだったか?
紹介で利用した時計職人の腕はよほど確からしい、と……。
確かならば再び利用するのはよほど先か。
ずれるに慣れてしまった哀れな時計をしまい込み、
思い出した顔との約束を確認せんと港の伝言板へと向かった]
(186) 2019/07/28(Sun) 23時半頃