[やってきたのは音楽に疎い自分でも知ってる、天才ピアニスト。この城で過ごした間、彼の練習するそのピアノの音を幾度となく耳にした。
上手い、下手はわからなくても、
なんとなく、彼の音は胸にじんわり、沁みてきて。
ある時は春の慈雨のように、
またある時は夏の嵐のように、
またある時は、冬の刺すような寒さの霧雨のように。
何かから逃れるように庭に飛び出してくることもあったっけ。曰く、自然は雑音が和らぐとか、落ちつくってお話してくれたことがあった。
酷く辛そうなときは、アップルミントの葉を揉んで鼻先に持ってったこともあった気がする。
表情がいつも変わらないけど、きっと繊細な人。]
セシルさん
はい とても綺麗です
[ジェフリーを追ってきたのだろうか。掛けられた言葉は自分に向けられたもののようだから、そう返してはにかんだ。*]
(184) 2016/07/27(Wed) 23時頃