【人】 宝飾交易 黍炉

―目覚めの朝―

『早く起きて、お寝坊さん。
ほら、こんなにいい天気だもの、眠ってちゃ勿体無いわ』

[そんな、彼女の声が、聞こえたきがした。

雨の日でも風の日でも彼女にとってはいい天気で
貴方と過ごすならどんな天気でもきっと素敵な一日だわ、と
理解に苦しむ己に何度も何度も聞かせてくれた。

それでも、子守唄の魔法が解け切らぬ己の目を覚ます、解除の魔法は……


――己の腕が貫いたのは、一体のドールの胸だった。
牢獄に、人工血液を運んできたあのドール。
最初の悪戯を仕掛けた、あのドールだ…。

彼女とは似ても似つかぬその姿が、何故か彼女と重なって、動けずにいる己の頬をドールの無機質に冷たい掌が包み込み…]

(182) yahiro 2014/02/10(Mon) 04時半頃