―深夜・客室2G―
ナムニルビム、私は誓う。滅却せよ。心身を乱す欲望を滅却せよっ
[――祈りなさい。瞑想をしなさい。執着心を、煩悩を捨てなさい。
―――さすれば、如何なる厄災も、貴方がたの前では無力となる。
それは信徒達に説いた教え。
しかし。水に仕組まれたもの>>1:405、シチューに含まれていたもの、花の香が齎すもの、ピッパの服からのぞくもの、ゲイルの見せたもの、マーゴの指が頬に残したものが、捨てるなと甘言する。
食堂で、結果的に起こしてしまった騒ぎ。
まだ修行が足りなかったかと溜息を吐く。
荒れ狂いそうになる胸の内を押し隠そうとした。
精神と肉体のコントロール。
寒さならば厚い皮下脂肪を持つ北極熊のように、暑さには丈夫な皮膚を持つアフリカ象のように。あらゆる欲求もコントロール出来ていた。
出来ていた――のだ。この山に入るまでは。
どこから狂ってしまったのだろう。どこからこの身は「人」に戻ってしまったのだろう。]
(180) 2012/12/05(Wed) 04時半頃