[他愛ない世間話とだけ見れば簡単な事のように思えるが、「客と店員」の間柄を踏まえると存外難しい。
両者の間に行き来する「金」の存在があるからだ。
美味いカクテルだけを出せばいいだけなら、カウンターにバーテンが立つ必要は無い。
他者と話をする事による癒し、心の安寧、憂さ晴らし、自身の確認。
この裏通りであれば、情報収集なんかも含まれるか。
とにかく、何らかを求めてやってくる客のニーズに応えられるように対応しなければいけない。
自分とて、曲がりなりにも通用するようになるまで年を重ねた。
それでも物騒な客が上がり込んでくる事も無い訳では無く。
一時期は用心棒として腕利きの男を雇っていた事もあったが、喧嘩沙汰の損害を加速させるだけという結論になり直ぐに廃止にしたのだったか。
会話をしながらも器用に頭の片隅でそんな事を思い返していたからだろうか、此方へ向かってくる気配にはぶつかるまで気付かなかった>>173]
(180) 2014/01/19(Sun) 14時半頃