そうか……そうか、そうか。
ついに、心を入れ替えたのか。
[感極まって、狐の眼に涙が浮かぶ。
かつては、人を容赦なく膾に斬り殺していた邪悪な妖だった。
遥かな昔、助命と引き換えに、誓言で力を縛って改心を約束させて。
それでも、どうしても人への悪戯をやめられないというので、致し方なく妥協して。
せいぜいがところ小さな切り傷に、それも最後には薬を塗るようにさせてから、数百年。
――ついに、自分から人助けをするなどと、言い出すとは。
どうしようもない博徒を子に持った親が、ある日、真っ当に働くと伝えられたならこんな気持ちがするのだろうか]
よかろう、判った。
斯様な事態じゃからな、そのままでは、手に余ることもあろう。
イタチよ――いつぞや縛った力を、解いてやる。存分に、人の助けとなれ。
[こうして、ひとつの思い込みの元に、都の夜にいにしえの妖魔が解放された]
(179) 2014/09/26(Fri) 23時半頃