[答えに期待はしていなかった。いや、むしろ、答えてくれないことを期待していたのかもしれない。
けれど、ハルが教えてくれた藤堂のこと――そして、ハルが生まれた理由。>>157>>158>>159>>161
それを知って、……俺には、何が言えたのだろう。]
……悪い、……。
[聞いたのは俺。だが、真っ先に出たのは謝る言葉。
踏み入ってはいけない領域であることは、感付いていたのに。
解離性同一性障害。聞いたことはある。
藤堂は、辛い現実を受け入れられなくて、“ハル”を生み出した。
兄の死と、孤独を切っ掛けに。]
そうだな。
……俺も、似たようなものだ。
昔のことを思い出して、その事実に耐えられる気がしない。
俺はもう、昔の俺とは別の人間になったんだと思う。
記憶が失われたあの日から。
……思い出すということは。俺ではない、別の奴の過去を背負うということだ。
(178) 2015/06/23(Tue) 01時頃