【人】 宝飾交易 黍炉

―束の間の夢―

『……捨ててあるなら、私が拾っても良い？』

それが彼女の第一声だった。
何と答えたかは覚えていない。

『あら、女の子かと思ったのに、男の子だったのね、
まぁいいわ、丁度これから男手が欲しいと思っていた所だったし
行くところが無いなら、うちの子になりなさいな』

薄汚れた子供を洗いながら、犬でも拾う気安さで彼女は言った。
何と答えたかは覚えていない。

(176) yahiro 2014/02/10(Mon) 04時半頃