[目を瞬いて呟いた。
一族の反対を押し切り、因習に縛られず、己を押し通す姿に、一種憧憬に似たものを、幼いころから感じていた。
だが彼がそうである程に、和を保とうとでもいうようにこの気持ちに口を噤む。
羨望や嫉妬の裏返しとは、少し違う。
男なればこそ、国のを動かす立場を与えられることも考え、留学も許されようというもの。
求められる資質が違う自分が行ったところで罷り通りはしないのは、母親たちを見てよく知っていた。
多分、そう。
外への希求と同時に、家族―――この宮殿に住まう家族のように思うひとたちを、同じ位に愛しく思う。
ただ、それだけの単純な感情。]
おかえりなさい、ケヴィン兄様!
いつお帰りになっていたんですか?
ごめんなさい、全然気づかなかったの。
[母は違えど、彼を兄と呼ぶ妹を、彼がどう思っているかは、知らない。
腕の中のミーアキャットも一緒に、顔を上げた]
(174) 2013/01/11(Fri) 22時頃