[ジェフにぃの事は大好きだった。
お土産でくれた、一枚一枚手で描かれた絵本は、臨場感溢れてワクワクさせられて、物語の世界に引き込んでくれた。世界に一冊しかない絵本は、今も本棚では無く、ベッドサイド。枕元に置かれている。
そんな絵本を選んでくれるくらい。彼は絵画と言う物に惹かれていたのだろう。
――正確には、『X城の思い出』に。
姉の真似をしなくなったのも、その頃からだった。
幼心に何か感じる物があったのだろう。真似をしても勝てない事に、気付いたのか。本能的に、違う道を歩む事を選んだのか。
ジェフリーが、絵画を譲ってくれと、何度も姉と交渉している事は知って居た。
何度も交渉に来てくれる度、お土産をくれる彼の来訪を心待ちにして、笑顔で彼を出迎えた。
館の中でも珍しい行動も、ドロシーだからで済まされた。
彼が来るのが、とても――とても、嬉しかった。*]
(173) 2016/07/27(Wed) 22時半頃