―泥の中の汚泥―[忘却の牢獄の中の出来事を、ふと馳せる。人間同士だった敵国の二人、ジェレミアとイアンの仲睦まじい様子――まるで幼児のような二人が失っていたものはアイデンティティや自尊心であろうと高を括ってはいたけれど。牢を出た後の… 特に、将校の方の様子は気になっていた。イアンに、どのような冷たい態度を取られようとも、決して彼の傍を離れない、というかのような。そう、あれは… 熱に浮かされた狂人のような、眸。放置しておけばいずれ、改めて彼等の足許を調べ上げられ国に、処分されてしまう可能性も強い。ただ殺されてしまうよりは、……男は双眸を細め、歪んだ笑みを宿す]
(172) presage 2014/02/10(Mon) 03時半頃