―街のベンチで、ヴェスと―
[ベンチに座るこどもとおとな。>>1:181
注文通り紙袋の中には二つのメロンパン。
焼きたてのパンは芳ばしい匂いに、しあわせの香りだ、なんて隣の彼に笑った。
幼い手の中のメロンパンが、半分くらいに減った頃。
ふと話し始めるは、先程会ったばかりのこどものこと。
降る白のように清らかで、物静かで
純真だとか無垢だとかが似合うような、おとこのこ。]
俺はあの子…シルクのファンでね
楽屋の前に、こっそり花を置いたこともあったな
…喜んでくれたかは、ついぞわからなかったけど
劇場を降りるって聞いたときは、中々にショックだったよ
[繰り返す日常の中、見つけたささやかな楽しみの一つ。
自分出番を待ちながら、もしくは、出番を終えたその後に
舞台の袖で、彼の歌声に耳をすませていた。
劇場のざわめきさえ耳に入らず、まるで啓蒙な信者のように瞳を閉じて、美しき音色だけを聴いていた。]
(172) 2015/09/18(Fri) 21時頃