[先よりもマシになっている事に気付いたのなら、今度こそ安堵の息を吐き。手にしたボトルを貴方へと差し出せば、少しはなれた椅子か、ベッドか、さて何方に座ったものかと逡巡する。
そしてやがて、人一人分の半分の空間を開けて貴方の隣へと腰掛けた。]
……あぁ、…そう言えば。
手袋、ありがとう。お陰でとても暖かかった。
――……そっちは、冷えなかったか?
[外なら兎も角、此処はもう部屋の中。バスの中でも頑なに取ろうとはしなかったこの手袋も、流石にまだ付けたままでいるのは不自然だろう。
本当は、返したくなんてない。
あわよくばこのままずっと借りていたいとそう思うけれど、それでも彼に礼のない奴だと思われるのは、嫌だったから。
それでも、名残惜しさは消えてくれやしないから。
不自然にならない程度にゆっくりと手袋を外したのなら、少しだけ目を伏せて彼へとその手袋を渡さなければ。
――そのまま彼がその手袋を、受け取ってくれたのなら。
その時に生身の肌に触れた彼の手のあまりの冷たさに、きっと瞠目してしまっただろうけれど。]
(172) 2015/11/20(Fri) 23時半頃