―そして、惨劇の時・生物学教室―
[それから、どれほど経ったのか。いや、実際はごくごく短い時間だったのかもしれない。
もはや、はっきりと聞こえてくる悲鳴。遠くを駆ける多数の足音。
やがて、男も耐えきれず状況を確認しようかと扉を開けようとした刹那――――校内放送>>#1の悲鳴が鼓膜を刺激した。
未だ、現実とは思えない断末魔の声。
とたんに室内を走る不安の影。ひっ、と喉を鳴らす音]
落ち着いてください! 騒がないで。
[咄嗟に、男は指示を飛ばした。平時ならば多少は効果のある男の声も、今の状況下では鎮静するには至れない。
無理もない。悲鳴や呻きの声は、今もこうして届いてきているのだから。
外へ出ようとする生徒達に、男は力強い声で制止の言葉を投げかける]
外へ出ないで!
……何が起こっているのか分からない内に外へ出るのは、得策ではありません。まずは俺が、状況を確認してきます。
ただ、皆さんも、いつでも動けるように、心がけていてくださいね。
脅すつもりはありませんが――――何かが起こっていることは、明白でしょうから。
―そして、惨劇の時・生物学教室・了―
(171) 2011/12/02(Fri) 01時頃