[この時雨女学館内での「手紙」の伝説は、私も知っていた。送った人がいたという噂も聞いていた。
誰が送った、誰に送った、とまではよく覚えていなかったけれど]
手紙……。そう、だったんだ。
[だから私は、芦屋先輩が、木屋先生に好意を抱いていたのだと察した。そしてその好意は、先輩が大人になった今も続いているのだとも。]
そう、だったんですね。
[泣きじゃくる先輩の吐露を嘘だとは流石に思えなかった。
胸がとくりとする。別に泣き顔だとか、生脚だとかに魅せられたからではない。私と同じなのかも――そう、思ったから。
けれどここで、私自身の秘密を告げることはしなかった。
こどものように泣いて当り散らす先輩を前にして、そんな場合ではなかったのだから。]
私も。もう一度でも、先生に、会いたい。
[目には涙を溜めたまま、努めて穏やかに言葉を紡いだ。]
(169) 2017/02/01(Wed) 18時半頃