[床に膝をついて震えていると、どこからか音が聞こえる気がした。
よろめく足取りで何とか窓を開ける。寒気にまた少し咳が出る。
それでも窓から身を乗り出して耳を澄ませていれば、やはり微かに聴こえてくる。静かで弱々しく、しかし透き通るような歌声。雪に喧騒が吸われていなければ僅かにも聴こえなかったかもしれない。]
……レティーシャかな。
[僕の部屋は教会に近い。こうやって聖歌が聴こえてくることもある。彼女が歌っている時に聴こえることがあるのは、教えてあげたことはないけれど。きっとそうしたら彼女は教会で歌うことを避けてしまうから。]
もっと……胸を張ればいいのにな……せっかく綺麗な声なんだから……。
[窓際に頭を置いてしまって、目を瞑りながらしばらくの間その歌声を聴き逃さないようにしていた。]
(169) 2013/02/03(Sun) 22時半頃