[3歳児に比べてばずっと控え目ながら、純粋な好奇と興味に張りを増した双眸は、続く一言に光を欠く。
白手袋の意味を彼が理解できずとも無理はなく。
不自然のないよう振舞っているのだから、誤解を招くのも当然で。
それらを除外したとて、ありふれた世間話の一端だ。
これまで何度となく繰り返してきたことを宣えばいい。]
────…お褒め頂きありがとうございます
お預かりしている大事な家族のひとりでして
まだ足が届かないので、このまま此処に座っても?
[口元は緩く、口調も穏やかに。
自慢気に幼児を抱え直し、ふくらとした頬に口髭を寄せる。
『じーじ、ガタンゴトン?』と笑う声には、自然に笑い返した。
いま、この瞬間も、自らの仕事に誇りを持って従事している。
同じように誇らし気に働く彼を前に、何ら恥じ入ることなぞないというのに。
何故、こんなにも胃は重く、左胸のあたりが傷むのか。]**
(169) 2019/07/31(Wed) 01時頃