[ 勿論俺も浮かれていた訳で、だからつい、気が緩んでしまったんだ。
騒ぐ皆を見て笑いながら、俺もシャツに手をかけて。
気付く。
あー、昨日殴られたんだった。
生々しく腹を飾る痣の色、忘れていたと心中でぼやく。
とはいえ、着替え始めた男子の輪の中に居た俺は、一人だけ着替えない方が不自然だった。
何で着替えないんだ、と聞かれる方が面倒だし。
この場に先生は居ないのだから、と。
どうでもないような態度で、俺は着替えを行った。
不自然にはならない程度、出来るだけ周りに見えないように気を配ったけれど、それは無理な話だったかもしれない。
もしクラスメイトに“その痣はどうしたの”と聞かれれば、“喧嘩だよ、兄弟喧嘩”と、けろりと答えただろう。
尤も、時折体に痣を作っていることを、体育の着替えで男子は元から知っていたかもしれないし、その時同じことを聞かれたのなら、同じように返しただろうが。 ]*
(167) 2016/09/19(Mon) 21時頃